第32章

樋口浅子は抜糸を終えて病院を出ようとしたが、相澤裕樹の怪我が気になり、やはり安心できなかった。

病室のドアの前に着いた時、相澤裕樹の苦しそうな呻き声が聞こえてきた。

きっと薬を塗られて痛いのだろう。

樋口浅子は胸が痛くなり、無表情のまま扉を開けて中に入った。

すると、藤原美佳がアルコールで相澤裕樹の傷口を消毒しているところだった。

「藤原美佳、あなた頭おかしいの?アルコールで消毒するなんて、彼を痛がらせたいの?」

相澤裕樹は痛みで額に汗をにじませ、唇も少し青白くなっていた。

樋口浅子は藤原美佳が彼をこんな風に扱うのを見るに忍びなく、彼女を押しのけてベッドの端に座った。

樋口浅...

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